建設業許可 経営業務管理責任者の要件と証明書類【2026年版】

建設業許可 経営業務管理責任者の要件と証明書類【2026年版】アイキャッチ

「建設業許可を取りたいが、経営業務管理責任者の要件を自分が満たしているかわからない」「経管って廃止されたって聞いたが本当?」——そんな疑問を持って調べ始めた方に向けて、行政書士が令和2年改正後の最新要件・証明書類・兼任ルールをわかりやすく解説します。

📌 この記事のポイント

  • 経営業務管理責任者(経管)は廃止されていない。令和2年改正で要件が「緩和・追加」された
  • 要件の充足方法は「体制イ(一人で満たす)」と「体制ロ(組合せ体制)」の2パターン
  • 個人事業主・一人親方は確定申告書5期分+請求書20件以上で経管経験を証明できる
  • 2024年12月の健康保険証廃止後は、常勤性の証明書類が変わっている
  • 経管と専任技術者は同一人物が兼任できる(一人親方でも許可取得が可能)

経営業務管理責任者(経管)とは?廃止ではなく「要件緩和」だった

「廃止された」は誤解!令和2年改正の正しい理解

「経営業務管理責任者は廃止された」という話を耳にしたことはないでしょうか。これは誤解です。

令和2年(2020年)10月の建設業法改正で、経営業務管理責任者の制度は廃止されたのではなく、要件が緩和・追加されました。

改正前(令和2年9月以前)改正後(令和2年10月以降)
充足の仕組み1人の役員・個人事業主が単独で満たす単独(体制イ)または組合せ体制(体制ロ)が選択可
業種の縛り許可業種と同じ業種での経験が必須建設業全般の経験で可(業種縛り廃止)
補佐者体制なし役員2年+補佐者3名の配置で許可取得可能に

経管の設置は現在も建設業許可の必須要件です。この要件を満たさなければ許可は取得できません。

経管とは何か

経営業務管理責任者(通称:経管)とは、建設業の営業所において対外的に責任を持ちながら、経営業務を総合的に管理する者のことです。

  • 法人の場合:常勤役員のうち1人
  • 個人事業主の場合:本人または登記された支配人のうち1人
経営業務管理責任者の要件:体制イ・ロの概要図

経管の要件①:一人で満たす場合(体制イ)

令和2年改正後も、1人で経管の要件を充足する方法(体制イ)は3パターンあります。

イ(1):5年以上の経管経験

建設業に関して、常勤の役員等として「経営業務の管理責任者」としての経験が5年以上あること。

改正前は「許可を受けようとする業種と同じ業種」での経験が必要でしたが、改正後は建設業全般の経験で認められます。電気工事業の取締役5年を経て、内装工事業の許可を取得するといった組み合わせも可能です。

対象となる役職の例

  • 株式会社の取締役(代表取締役・取締役を問わない)
  • 合同会社の業務執行社員
  • 個人事業主本人

イ(2):準ずる地位での5年以上の管理経験

経管に「準ずる地位」にある者として、経営業務を管理した経験が5年以上あること。取締役から業務執行権限の委任を受けた執行役員などが対象です。

イ(3):補佐業務での6年以上の経験

経管を補佐する業務に従事した経験が6年以上あること。部長・営業所長として現場の経営業務を支えてきたケースが対象です。


パターン対象者必要経験年数
イ(1)取締役・業務執行社員・個人事業主5年以上
イ(2)執行役員など(権限委任を受けた者)5年以上
イ(3)部長・営業所長など(補佐経験)6年以上

(出典:国土交通省「許可の要件」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html 参照日:2026-05-10)

体制イ(単独充足)3パターン比較:①役員・事業主②準ずる地位③補佐業務

前職・他社での経験は使えるか?複数社の経験合算ルール

「自分は今の会社の社長になったばかりだけど、前の会社でも10年以上取締役をやっていた」——そんな方も多いのではないでしょうか。経管の経験年数は、現在の会社でなくても、前職や過去に在籍した複数の会社での経験を合算して満たすことができます

たとえば、A社で取締役を2年、その後B社で取締役を3年経験していれば、合計5年として認められます。複数社にまたがって経験を積んできた方にとっては、非常に重要なポイントです。

複数社合算の際に必要な証明書類

複数社の経験を合算する場合は、それぞれの会社ごとに証明書類が必要になります。前の会社が建設業許可を持っていたかどうかによって、用意する書類が変わります。

区分主な証明書類
前職の会社が建設業許可を持っていた場合登記簿謄本(閉鎖事項全部証明書)+建設業許可通知書のコピー
前職の会社が建設業許可を持っていなかった場合登記簿謄本+5年分の工事契約書・注文書・請求書など
常勤性の確認(いずれの場合も必要)年金被保険者記録照会回答票(年金事務所発行)または離職票

現在の会社に在籍しながら前職経験を使う場合の注意点

現在の会社に常勤の役員等として在籍しながら、前職での経営経験を経管の要件として使うことは問題ありません。ただし、経管として登録できるのは現在常勤している1社のみです。

特に注意が必要なのは「常勤性」の要件です。他の会社で経管・専任技術者などの「専任」ポジションに就いている場合、申請会社での常勤性が認められません。前職と現職の在籍期間が重複していないかも合わせて確認しましょう。

まとめ:前職・他社での経験は合算できますが、「各社ごとの証明書類」と「現在の常勤性の確保」の2点がポイントです。閉鎖した会社や書類が古い場合は、早めに行政書士へ相談することをおすすめします。


経管の要件②:組合せ体制で満たす場合(体制ロ)

「5年以上の役員経験を持つ人が社内にいない」という場合でも、令和2年改正で新設された体制ロを使えば許可取得の可能性があります。

体制ロとは

常勤役員等のうち1人が一定の要件を満たし、かつ財務管理・労務管理・業務運営の3分野それぞれに5年以上の経験を持つ補佐者を配置することで、経管の要件を充足できる仕組みです。

体制ロの役員等要件(いずれかに該当すること)

区分内容
ロ(1)建設業の役員等経験2年以上を含む、役員等または役職者(部長等)としての経験5年以上
ロ(2)役員等経験5年以上を含み、かつ建設業の役員等経験2年以上

(出典:国土交通省「許可の要件」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html 参照日:2026-05-10)

補佐者3名の要件

業務区分業務内容の例必要経験年数
財務管理決算書作成・資金調達・原価管理5年以上
労務管理雇用・社会保険・労働条件管理5年以上
業務運営工事施工管理・営業・法令遵守5年以上
補佐者の兼任と注意点(詳細)

財務・労務・運営の3要件を同一人物が兼ねることも、法令上は可能とされています。ただし、1人がすべてを兼任できるかは申請先の都道府県窓口によって運用が異なります。事前に確認することをおすすめします。

また、体制ロは証明書類が増えるため、手続き全体は体制イより複雑になります。「経験年数が足りない」という状況で無理に体制ロを使うより、経管の要件を満たす人材を役員に招聘する方がシンプルなケースもあります。

体制ロ(組合せ体制)の構成:役員等+補佐者3名の配置図

常勤性・経営経験の証明書類ガイド(2026年最新版)

経管の要件を満たしていても、証明書類が揃わなければ許可申請はできません。2種類の証明(常勤性・経営経験)に必要な書類を整理します。

① 常勤性の証明書類(2026年版:健康保険証廃止後)

⚠️ 2024年12月2日から健康保険証の新規発行が停止されました。従来、常勤性の証明書類として広く使われていた「健康保険被保険者証(事業所名記載)」は、新規発行が止まっています。お手元の健康保険証が古くなっている場合は、以下の代替書類を早めに準備してください。

書類取得先備考
厚生年金被保険者記録照会回答票年金事務所被保険者として事業所に在籍していることを証明
住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)市区町村前年度のもの。事業所名・報酬額が確認できる
役員報酬明細書(法人の場合)自社作成月額報酬が明確に記載されているもの

⚠️ 月額報酬が低すぎる場合は注意:一般に月額10万円未満の役員報酬では「常勤」と認められないケースがあります。申請前に確認しましょう。
(都道府県・担当窓口により運用が異なる場合があります)

② 経営経験の証明書類(ケース別)

【法人役員の場合】

書類用途
建設業許可通知書(写し)経験期間中に許可業者であったことの証明
商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)役員就任・退任の年月日を証明
厚生年金被保険者記録照会回答票常勤性の補強

【個人事業主・一人親方の場合】

書類用途
確定申告書(第一表・第二表)5期分事業の開始・継続を証明
工事の請求書+入金通帳5年間で20件以上(3ヶ月に1件ペース)が目安
工事請負契約書(あれば)請負工事の内容・金額を補強証明

⚠️ 「5年間で20件以上・3ヶ月に1件ペース」は東京都の運用例です。都道府県によって基準が異なるため、申請先の窓口で必ず事前確認してください。

【補佐経験(イ(3))の場合】

書類用途
人事発令書・辞令(写し)部長・課長などへの任命を証明
業務分掌規定経管補佐業務の範囲を証明
源泉徴収票または給与明細(6年分)在籍期間・報酬を証明
常勤証明書類の比較:法人役員・個人事業主・補佐経験別チェックリスト

経管と専任技術者の兼任|一人親方・個人事業主はどうする?

建設業許可には経管のほかに「専任技術者(専技)」の設置も必要です。一人親方や小規模事業者からよく聞かれるのが「1人で両方を兼ねられるのか?」という疑問です。

兼任できる条件

同一の営業所(主たる営業所)内であれば、経管と専技を同一人物が兼任できます。

条件兼任の可否
同一営業所(主たる営業所)内での兼任兼任可
本店(経管)+支店(専技)にまたがる兼任❌ 不可(別々の常勤が必要)
経管と専技の両要件を1人が満たしている兼任可

専技の要件(一般建設業の場合)

ルート要件
国家資格業種別の施工管理技士・建築士・電気工事士等を保有
学歴+実務経験指定学科の大卒+3年以上、高卒+5年以上
実務経験のみ10年以上の実務経験(工事契約書・請求書で証明)

(出典:国土交通省「許可の要件」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html 参照日:2026-05-10)

一人親方の典型的なパターン:「経管=確定申告書5期分で5年の個人事業経験を証明」+「専技=10年以上の実務経験を工事請求書で証明」の組み合わせで、本人1人が両要件を満たして許可取得するケースは珍しくありません。

👉 関連記事:建設業許可の取得要件・費用・手順を完全解説【2026年】


経管がいなくなったときのリスクと対応

経管は「許可の根拠」となる必須要件です。退職・死亡などで経管が不在になった場合、対応が遅れると許可取消のリスクがあります。

経管が退職・死亡
       ↓
2週間以内に変更届を提出(後任を立てる)
       ↓
後任を立てられない場合 → 廃業届の検討(許可取消の前に)
       ↓
再申請が必要(審査期間の目安:知事許可で約30〜45日)

⚠️ 変更届の提出期限は退職・死亡後2週間以内です。遅延すると行政指導の対象になり、最悪の場合は許可取消となります。後継者の育成・事前登録を日頃から意識しておきましょう。


「自分が経管になれるか」を3ステップで自己診断

申請前に、経管の要件を満たせているかどうかを自分でチェックしてみましょう。
(出典:国土交通省「許可の要件」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html 参照日:2026-05-10)

STEP 1|体制イ・ロのどちらで申請するかを判断する

建設業の役員・事業主として5年以上の経営経験がある?
├── YES → ✅ 体制イ(単独)で申請可
└── NO  → 建設業の役員経験が2年以上ある?
              ├── YES → さらに役員等として通算5年以上の経験がある?
              │           ├── YES → ✅ 体制ロ(組合せ)で申請可
              │           │          ※財務・労務・業務運営の補佐者が別途必要
              │           └── NO  → ❌ 現時点では要件不足(専門家に相談を)
              └── NO  → ❌ 現時点では要件不足(専門家に相談を)

STEP 2|経験年数と業種を確認する

  • 経験期間は建設業を営む会社での役員・事業主としての期間か?
  • 複数社の経験を合算する場合、各社ごとの証明書類が揃っているか?
  • 個人事業主として経験した場合、建設業として証明できる書類(請求書・通帳等)があるか?
  • 常勤性(申請会社に常勤して職務に従事していること)を証明できるか?

STEP 3|証明書類が揃うかを確認する

経験の種類主な証明書類
法人の役員経験登記事項証明書(履歴事項・閉鎖事項)、建設業許可通知書
個人事業主の経験確定申告書(経験年数分)、工事請書・請求書・通帳
補佐業務経験(体制ロ)業務分掌規定、在籍証明書

申請前に最低限確認すべき5つのポイント

  1. 常勤性:申請会社に毎日出勤できる状態か(他社の常勤専任ポジションとの兼務は不可)
  2. 経験年数:5年分(体制ロは2年+通算5年)の経験期間が揃うか
  3. 業種の整合性:経験した建設業の業種が申請業種と整合しているか
  4. 証明書類の保存状況:確定申告書・許可通知書・登記謄本が手元にあるか
  5. 補佐者の配置(体制ロの場合):財務・労務・業務運営の担当者を社内で確保できるか

上記すべてに「はい」と答えられれば、経管要件の自己診断はひとまず合格です。「よくわからない」という項目があれば、管轄の窓口または行政書士への相談をおすすめします。

経営業務管理責任者の自己診断3ステップフロー

よくある質問(FAQ)

Q1. 経営業務管理責任者は廃止になったのですか?

廃止ではありません。令和2年(2020年)10月の改正で「要件が緩和・追加」されました。従来の個人充足(体制イ)はそのまま残り、組合せ体制(体制ロ)が新たに加わりました。経管の設置は引き続き建設業許可の必須要件です。

Q2. 個人事業主(一人親方)でも経営業務管理責任者になれますか?

なれます。個人事業主本人(または登記された支配人)が経管の対象です。確定申告書5期分と工事請求書・通帳(5年間で20件以上が目安)を揃えることで、経営経験を証明できます。

Q3. 経営業務管理責任者と専任技術者は同じ人が兼任できますか?

同一営業所(主たる営業所)内であれば兼任できます。一人親方では本人が両方を兼ねるケースが一般的です。本店の経管と支店の専技を同一人物が兼ねることは認められません。

Q4. 5年の経験が足りない場合はどうすればよいですか?

令和2年改正の体制ロを使い、建設業の役員経験2年以上+補佐者3名配置で許可取得できる場合があります。また他社での役員・補佐経験を組み合わせて5年を充足するケースも。要件の判断は複雑なため、行政書士への相談をおすすめします。

Q5. 健康保険証が廃止されたが、常勤性はどうやって証明しますか?

2024年12月2日以降、健康保険証の新規発行は停止されました。代わりに「厚生年金被保険者記録照会回答票」または「住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)」で常勤性を証明します。マイナ保険証は申請書類として使えない場合があるため、年金事務所で照会回答票を事前取得しておくことをおすすめします。


申請手数料と行政書士報酬の費用目安

建設業許可を取得するには、行政への手数料(法定費用)と、行政書士に依頼する場合の報酬という2つのコストが発生します。事前にしっかり把握しておきましょう。

法定手数料(国・都道府県への納付額)

申請の種別ごとに手数料が定められており、全国一律です。

申請区分知事許可大臣許可
新規(一般・特定)9万円15万円
更新5万円5万円
業種追加5万円9万円

知事許可の手数料は都道府県の収入証紙で、大臣許可の手数料は収入印紙(登録免許税の形で納付)でそれぞれ支払います。一般・特定を同時に申請する場合は合算額(知事許可なら18万円)が必要です。
(出典:国土交通省「許可申請の手続き」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000086.html 参照日:2026-05-10)

行政書士報酬の相場

依頼内容報酬の目安
新規取得(一般・知事許可)10万〜20万円程度
新規取得(特定・知事許可)15万〜25万円程度
更新5万〜10万円程度
業種追加5万〜15万円程度

「自分で申請」と「行政書士に依頼」の比較

建設業許可の申請書類は20種類以上に及び、経管・専技の要件証明など専門的な判断が必要な箇所が多くあります。自分で申請する場合の最大のリスクは、書類不備による差し戻しや、要件を満たしていないまま申請してしまうことです。

行政書士に依頼する主なメリット:

  • 要件確認の精度が上がる:経管・専技の要件を事前に正確に判断してもらえる
  • 差し戻しリスクを軽減できる:書類不備での窓口補正指示が起きにくくなる
  • 本業に集中できる:書類収集・作成・窓口提出をすべて任せられる

まとめ:経管の要件を確認したら、次の一手は?

経営業務管理責任者(経管)について、令和2年改正後の要件・証明書類・兼任ルールを解説しました。

今日から確認すべき3つのポイント

  1. 自分(または社内の誰か)が体制イまたは体制ロの要件を満たすか確認する
    役員歴・個人事業主歴を実際に年数で計算し、5年(または6年)に達しているか確かめましょう。
  2. 証明書類が揃っているか確認する
    個人事業主なら確定申告書5期分と工事請求書・通帳。法人なら商業登記簿謄本と建設業許可通知書(過去のものも含めて)。
  3. 常勤性の証明書類を2026年版に更新する
    健康保険証は使えません。厚生年金記録照会回答票または住民税特別徴収税額通知書を年金事務所・市区町村で取得してください。

経管の要件を確認したら、次は申請書類の準備と申請方法の確認です。

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参考資料

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